会社経営者とメンタルヘルスの未然防止について話をするなかで、「何をもってパワハラになるのか」という質問を時々受けます。

確かに労災事案には精神科医の合議判断になるものもあり明確な回答は難しいのですが、厚生労働省の「業務による心理的負荷評価表の(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた出来事」の具体例が質問の答えに近いので紹介します。

ちなみに、心理的負荷の強度は「弱」「中」「強」と判断され、「強」は労災認定レベル、「中」は他の出来事(例えば、仕事の量・質の問題)の「中」と重なって労災認定レベルになったり、ならなかったりします。

1.(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた「強」の具体例。

・部下に対する上司の言動が、業務指導の範囲を逸脱しており、その中に人格や人間性を否定するような言動が含まれ、かつ、これが執拗に行われた。

・同僚等による多人数が結託しての人格や人間性を否定するような言動が執拗に行われた。
・治療を要する程度の暴行を受けた。

2.(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた「中」の具体例。

・上司の叱責の過程で業務指導の範囲を逸脱した発言があったが、これを継続していない。
・同僚等が結託して嫌がらせを行ったが、これを継続していない。

1と2から、『人格や人間性を否定するような言動』がパワハラだと理解するのが良いと思います。暴行は論外。

少し視点を変えた話をします。

平成26年度の精神障害に関する労災件数は497件で過去最多です。その中で最も多かった具体的な出来事は、事故や災害の体験でもなく、仕事の失敗、過重な責任の発生等でもなく、仕事の量・質でもなく、役割・地位の変化等でもなく、「上司とのトラブルがあった(221件)」でした。2番目の多かったのが「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた(169件)でした。

3.上司とのトラブルがあった「中」の具体例。

・上司から、業務指導の範囲内である強い指導・叱責を受けた。(パワハラではありません)
・業務をめぐる方針等において、周囲からも客観的に認識されるような対立が上司との
間に生じた。(パワハラではありません)

3の上司とのトラブルがあった「中」の具体例は、職場では普通にあることではないでしょうか。

しかしながら、2の(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた「中」が重なることで、労災認定レベルの強い心理的負担になってしまいます。

心理的負担を軽減するために、
・業務指導の範囲内において、上司の強い指導・叱責
・業務をめぐる方針等において、上司との対立
を躊躇するのではなく、『人格や人間性を否定するような言動』のパワハラをしないことです。

『人格や人間性を否定するような言動』が許される場面はどこにもありません。

株式会社ストレスマネジメント実践研究所 北尾一郎
<うつ病のない日本の職場を目指して、職場のストレスマネジメントに貢献します>

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