平成23年度労働者安全衛生特別調査(労働災害防止対策等重点調査)によると事業所(上司など)が考える労働者がメンタルヘルス不調をきたした理由のトップ7(複数回答)は以下のようになっています。

1.本人の性格の問題(64.0%)、2.家庭の問題(35.2%)、3.上司・部下のコミュニケーション不足(30.6%)、4.仕事量・負荷の増加(29.7%)、5.職場の人間関係(いじめなど)(19.9%)、6.仕事の責任の増大(過重な責任の発生)(16.7%)、7.分からない(15.6%)

事業所(上司など)が考える、労働者がメンタルヘルス不調をきたした理由のダントツ1位は”本人の性格の問題”です。本当?

確かに個人のパーソナリティやストレス耐性はメンタルヘルス不調に関係することは間違いありません。しかしながら、ダントツ1位であることに違和感を覚えます。ダントツ1位の理由は何だろうか。

1.本当に”本人の性格の問題”

どのような職場環境にもそれなりのストレスはあるものだけど、ほとんどの労働者はそれなりのストレスを本人のセルフケアにより解消してメンタルヘルス不調になっていない職場。同僚もメンタルヘルス不調は”本人の性格の問題”と考える。

2.”本人の性格の問題”だと考えたくないが”職場環境を変えることができない(と諦めている)ので、認知的不協和を回避するために、”本人の性格の問題”だと無理に考える。

(認知的不協和とは、複数の要素の間に不協和が存在する場合、一方の要素を変化させることによって不協和な状態を低減または除去しようとすること。)

認知1、事業所(上司など)は、職場環境に問題があることを薄々感じている。
認知2、職場環境に問題があるとメンタルヘルス不調をきたしやすい。
認知3、事業所(上司など)は、職場環境の問題を改善する。
認知4、職場環境に多少の問題があっても、メンタルヘルス不調になる人もいればそうでない人もいるから、メンタルヘルス不調は”本人の性格の問題”。だと考える。

認知1と認知2の矛盾を解消するため、認知1から認知3へ改善しようとする。しかしながら、職場環境改善は難しく、認知1から認知3への変化を諦めて認知2から認知4へ修正して認知的不協和を解消しようとする。

3.複数回答なので理由にしやすい”本人の性格の問題”

上司・部下のコミュニケーション不足+”本人の性格の問題”、仕事量・負荷の増加+”本人の性格の問題”というように複数回答なので、職場環境の各問題と”本人の性格の問題”が組み合わさって”本人の性格の問題”が、ダントツ1位になっているのかもしれません。

この複数回答のデータからは、事業所(上司など)が考える、労働者がメンタルヘルス不調をきたした最も大きな理由を読み取ることはできませんが、もし、”単独回答”が存在するならば、”本人の性格の問題”ではなく、職場環境の問題”がダントツ1位であってほしいです。

株式会社ストレスマネジメント実践研究所 北尾一郎
<うつ病のない日本の職場を目指して、プロジェクトの職場環境改善に貢献します>