対人関係において、相手を怒らせずに自分の言いたいことややたりたいことを伝えることができれば、ストレスはかなり軽減できる。

そういった自己主張のスキルがアサーションである。アサーションは単なる自己主張ではない。「自分と相手の両方に敬意を払い、相手の立場や権利を尊重しながら、自分の欲求、感情、意見、権利など、言いたいことを率直に表現すること」をアサーションという。

アサーションを成功させるためには、次の9つのスキルが有効である。1.主張価値があるか自問してみる、2.タイミングに注意を払う、3.「私メッセージ」を使う、4.肯定的に言う、5.具体的に言う、6.依頼の言葉の基本形は「感情+説明(理由)+依頼内容+(肯定的効果)」、7.断わりの言葉の基本形は「謝罪(感謝)+説明(理由)+断り表明+代替案」、8.非言語チャネルを主張的に使う、9.聴くスキルを使う。(出展:産業カウンセラー養成講座テキスト)

確かにアサーションの9つのスキルはどれも納得できるものばかりです。しかしながら、アサーションのスキルを持っている、持っていないに関わらず、言いたいことを言えずにいるプロジェクトメンバーはたくさんいるのではないでしょうか。

以下に事例を示します。(プロジェクトマネジャーからプロジェクトメンバーへクリティカルパスにある重要な設計を指示)

プロジェクトメンバーの心の中では「プロジェクトマネジャーの要求日程は理解できる。でも、こんな短納期で設計完了なんて絶対できないよ。でも、出来ない。と言ったら、もっと知恵を絞って、効率を上げてなんとかしろ。と言われるだけだろうし、詳細見積りをする時間ももったいないからとりあえず引き受けて、頑張ってみようか」

プロジェクトマネジャーは「引き受けてありがとう。頑張ってくれ、期待してるよ」心の中では、「本当にできるのだろうか。後は任せた、宜しく」

プロジェクトが進み、プロジェクトメンバーの設計は大幅に遅れた。事後対応に多大な労力を費やし、またストレスフルな状態が続いた。

プロジェクトメンバーが黙って引き受ける。このような職場環境をメンタルヘルスのため、プロジェクトの成功の為、改善しなければなりません。どうするか。プロジェクトマネジャーが「どうしてできるのか説明してくれ」の一言ではないでしょうか。

プロジェクトマネジャー(上司)は、プロジェクトメンバー(部下)ができない。と言ったら説明を求めるが、できる。と言ったら丸投げ。まるで部下に仕事を引き受けされる(ハイ、と言わせる)のが上司の仕事になっている。そうではなく、一緒に知恵を絞り本当の解決策を見つけるような人間関係が重要ですね。

株式会社ストレスマネジメント実践研究所 北尾一郎
<うつ病のない日本の職場を目指して、プロジェクトの職場環境改善に貢献します>